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「生きる力」を育成する美術教育の在り方に関する一考察

―「演技」の持つ力を活用して―

 著者は女優及び教育者として「すべての人を幸せにするにはどのような働きかけができるか」という問題意識を背景にして活動を行っている。そこで今日の教育課程で求められている「生きる力」の育成をすることが教育の本質であり、育むべき要素であることを確信した。

 序章では、すべての人を幸せにするためには、子どもと呼ぶ期間の段階から「自分の力で生きる力」を育成したいと考える。人は「生きる」という行動だけは誰かの代わりに行うことができない。私たち教育者が関わる子どもは主に施設や期間の限定的な付き合いであり、一生隣で支え続けることは難しい。周りの人や環境が変わっても、変わらない自分自身の力を利用して生きていけるよう習慣づけさせたい。自分で自分の人生を歩むことを改めて認識し、その上で駆使する「自分の力」を認識させ、育みたい。生きるために、生きる上で力なので、総括的に「生きる力」と呼ぶ。

 しかし、この「生きる力」を引き出す・育むとはどの様にアプローチしていけば良いのか。まず生きるという行動は無意識に行っている行動であること、スケールが大きいことからどのような条件や状況を指すのかをはっきりと想像することが難しい。何故、どの様な背景によって、どのように必要なのかは明記されているが、「生きる」とはどんな行動なのかについて明記がない。教育者として、分からない行動を教えることは困難である。育むべき能力や望む姿だけでは「生きる力」を育むことは実践する上で抽象的であることが現状であった。本論文の問いは、以上の問題意識を背景にした。

 本論文は、生きるとはどのような状態を指すのか、人が求める生き方はどの様なものか、そのために必要な技術や能力は何か、どう高めることができるのかについて、生きることを突き詰めた芸術「演劇」と、そこで用いられる人間らしさを追求した技術「演技」によって、説くこととした。

 本論文で述べる著者の考える「生きる力」の育成は、言葉として誕生したのは近年であるが、本来「教育」が誕生した頃から求められる力であった。教育全体の目的であるため、科目を問わず実施することが可能である。以上の方法より明らかにした「生きる力」を育むために、実際にどの様に働きかけることが可能か、従来の教育現場で落とし込むにはどうすれば良いか、どう在るべきかを著者の実践から示した。

序章 研究の目的

研究の方法の筋道

1 教育の歴史

1-1 教育の目的

1-2 教育の誕生

1-3 日本の教育機関

2 「生きる力」とは

2-1 「生きる力」の誕生

2-2 現行の学習指導要

2-3 「生きる力」が必要な社会とは

2-3-1 生きる意欲の低下

2-3-2 学歴より学習歴.

2-3-3 個の認識化

2-4 近代の教育改革より求められる子ども像

2-4-1 コミュニケーションの実践

2-5-2 学校の枠を飛び越えた生涯教育

2-4-3 内面性重視の試験科目

2-4-4 幼児教育の重要性

3 子どもの実態

3-1 教師と子どもの関係性

3-2 学ぶ意識

3-3 勉強に対する認識

図2 アンケート用紙(項目部分抜粋)(実際に使用したもの)

図3 教育の在り方の現状(子供達の捉え方)

図4 本来の教育の在り方

3-4 教育の在り方に関するギャップの原因

4 著者の考える「生きる力」とその育成法

4-1 教育とは

4-2 「自分の力で生きる能力」

4-3 過去に同じ「生きる力」を求めた教育者

4−3−1 サドベリー教育

4-3-2 ペリー就学前プロジェクト

4-4 フロー体験

4-5 グラウディング

4-6 創造力

4-7 「生きる」ことの具体性

5 「演技」から考える「生きる力」

5-1 「演技」と「生きる力」

5-2 演劇の歴史

5-3 演劇教育とは

5-3-1 日本における演劇教育

5-3-2 本論文における「演技」の扱い

5-4 アクティングコーチとは

5-4-1 日本におけるアクティングコーチ

5-4-2 アクティングコーチtori®

5-5 「演技」とは生きる技術

5-6 脚本とは理想の生き方

5-6-1 個を理解する

5-6-2 ドラマの必要性

図5 障害によってドラマが発生する過程.

5-6-2-1 障害を乗り越える力

5-6-2-2 障害とは

5-6-2-3 目的に気づく

5-7 「演技」とはコミュニケーションの芸術

5-7-1 相手に集中する

5-7-2 興味を持つ

5-7-3 よく聴く

5-7-5 自分の意見を持つ

5-7-6 衝動に従う

5-7-6-1 ネガティブな感情を受け入れる

5-7-7 行動するための大切な要素

6 美術教育での実践

6-1 美術の時間をどう扱うか

6-2 美術室の使い方

6-3 美術の学習意識

6-4 伝える姿勢

6-5 実践におけるエピソード

エピソード1

エピソード2

エピソード3

エピソード4

エピソード5

エピソード6

エピソード7

エピソード8

6-6 今後の授業提案

終章 終わりに 今後の展望

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