朗読「東京」を観て聴いて
東京芸術劇場 シアターイーストにて朗読「東京」を観て来ました。 シアターイーストは劇団ZAPPA以来かな。懐かしかったです。 以下、公式サイトより詳細。 「東京」をテーマにしたリーディングシリーズ始動! 東京を描く短編、戯曲、エッセイなど古今の名作に描かれた“東京”を二人の俳優が朗読する第一部、読後トークで自分の“東京”を語る第二部で贈る。 東京で生まれ育った人にとってのわが街 “東京” 外から来て東京に暮らす人にとってのわが街 “東京” それぞれの距離感で語られる“東京”と、読まれる物語から、この街のさまざまな顔をご覧いただけます。
本日は松村武さん演出 読手は大鷹明良さん、陰山奏さん、内田亜希子さんの三人 朗読作品は磯崎憲一郎さんの『電車道』でした。 小説の朗読を舞台で観るのは久しぶりで、朗読用に大半カットしたそうですが非常に聴き易かったです。 3人が代わる代わる登場し、去って、また登場して…自分の部分だけ読みにやってくる 台本を手に持ち、椅子に座り…というシンプルな演出でした。 すごく、ド直球な朗読で、読手の力が試されますが、演劇との境界線がきちんと引かれていて私は好きです。 2部のトークショーにて、演出の松村さんが「喋り言葉はどんどん喋り易いものが使われる様になる」「だから難しい口語文章を読むのは、運動で例えると、ただ歩いているだけじゃなく難しいダンスを踊っている様なものなんじゃないか」というようなことをおっしゃっていて、なるほどなぁと思いました。 ラ抜き言葉とか、本当にね。だって伝えるために喋っているのだから、手早く手軽に簡単に伝えるのが一番重要なんですから、どんどん簡略化されていくのは仕方のない事なのです。 そんな現実があるからこそ、難しい表現がとても美しくなる。 私も古い戯曲等、言葉の言い回しがたまらなく好きなので、とても共感出来ました。 ところどころ、噛んだり読み間違えるところがありまして、朗読だから稽古も難しいよなぁ…と思っていたのですが、稽古不足の前にまずこの本は表現の仕方が中々くせ者だったそうで...。 、が多く、中々。が出てこない文章ばかりでした。 でも喋っるのに夢中になっている時って、大体そうなりますよね。 作者の筆が乗っていた証拠かなぁ…と心地よく聴けました。 というのも、やはり読み手さんの声と抑揚の心地よさがそうさせてくれました。 声優読みのように、少し過剰な抑揚に聞こえるところも多々ありましたが…長い時間聴いていると、不思議とそれがちょうど良く聞こえて来ました。 朗読、難しいですね。 私も一度詩の朗読の舞台に立たせて頂きましたが… キャリアの差が大きく大きく出て来ます。 シンプルだからこそ、本当に難しい。 そしてトークショーも楽しかったです アナウンサーの中井美穂さんが司会を務めて下さっていました。 この人がいなかったらどう話が展開していったのか…朗読中とうってかわって皆さん自由すぎて、何度か笑い声が出てしまいました。 演出の松村さんはお話が上手で、情報も的確でテンポ良く、とても好印象でした。話す内容も共感出来る事ばかりで、次の舞台も観に行こうかしら。 大鷹さんは事務所の大先輩を思い出させるお方でした…口数が少なく、さっぱりしているのだけれど突き放すことはない温かい…。かっこよかったです。 陰山さんは喋ろうとしているのに言葉に思考が追いついてこないようで、度々沈黙や「あの〜…」という声が続いていて本当に可愛らしかったです…!朗読中とは全く印象が異なりました。 そして内田さん。自由すぎる…天然なのか…何を考えているのか…すごい の一言でした。。。笑 しかし自主練の仕方や解釈の仕方は私と似ていて、私も結構似ている事ロあるかもしれないなぁと勝手に親近感が湧きました☆ さてさて、小説の内容でもある「東京」についてなのですが…私自身東京生まれ、東京育ちなので 今更東京への憧れやイメージなんてものが無かったので、とても興味深かったです。 「渋谷なんて、ブラウン管でしか観た事無かったから、歩いているとどこかにカメラがあって撮られているんじゃなんて思う」と陰山さんがおっしゃっていて、何それ面白い!!!とびっくりしました。 そして松村さんのおっしゃった「浅草なんて辺りは由来があって土地に歴史を感じて安心するけど、西に進むと綺麗になっていって都会な感じがして不安になる。それでも、色んな背景があったんだなぁって『電車道』を読んでハッとしました。」という言葉が印象的でした。 トーク中、皆さんの上京話になり、私にもゆかりのある駅がちらほら出て来ましたが、みなさんの上京当時の様子と私の知っている駅の様子と違っていて、「あぁ…『東京のイメージ』は昔から変わらないけれど、実際住む人や時代が変わって、私の知っている姿は昔とは違っているんだな」としみじみしました。 若い年代より、年を重ねていた方が共感出来るところも多く聴いていて楽しめたかも…? また、「鉄道によって街が出来ていく」「学校よって駅がつくられていく」という言葉にも思わず反応しちゃいました。 私の通う大学が正に、学校・街作りのために校長自ら駅をつくった場所なのです。 作中にて、私立学校の校長が電鉄と契約して街を調えていく姿…自分の大学の創立者を想像しながら読んでおりました。 そんな個人的な事情からも、楽しく聴く事ができました。 でもやっぱり最後に思う事は 読むって、難しい。